Everywhere I go
最近どこに行って、そこで何を感じたか。日常の心が動くふとした瞬間を見逃さずにシャッターを切り続けるフォトグラファーのMIYU FUKADAが、写真と文章で綴る備忘録的連載。photo&text:Miyu Fukada photo&text:Miyu Fukada
味が伝えられない写真の裏側
年の秋ごろ、私は10年来の友達に会うためアトランタにいた。その日は射撃場に連れて行ってくれて、銃を初めて持ち、映画でよく見る天井からぶら下がる紙製の的をめがけて銃を撃つという、アメリカらしい体験をした。想像以上に重さのある銃を握り何かに向かって引き金を引くというのは結構怖くて、銃が合法のアメリカの恐さを身を持って知った。「もう2度と射撃場には来ない! これが合法なんておかしい!! 」なんて友達と議論してるうちに、お腹が減ってきた。
アメリカ南部にしかないご当地「WAFFLE HOUSE」に絶対行くと決めていたので、連れて行ってもらうことに。ところが、少し車を走らせるとカタカタと変な音……。タイヤの空気が抜けてホイールが地面にあたる音だった。当日は日曜で、どこも車屋はいっぱい、ところどころにあるガソリンスタンドで途中途中止まりながら、空気を入れつつ走り続けた。車を走らせるとすぐに目に入る見覚えのある黄色に黒字の「WAFFLE HOUSE」の看板。5年前にアトランタに来たときにはトランジットで行けなかったので、かなり楽しみにしていた。
写真を撮りたい私はお店の外観にこだわって「これでもないあれでもない」と選り好みしながら、ようやく着いたのがかなり街の外れにある1件だった。ちょっと不思議な看板で車を降りて近づくと、そこは昔「WAFFLE HOUSE」の1号店があった跡地。張り紙にすぐ先にもうひとつの店舗があると書いてあるので、すぐに向かった。
パンク中の車でやっとのことたどり着いた念願の「WAFFLE HOUSE」。陽気な黒人のウェイトレスに迎え入れられ、まずは席につく。でもかなり腹ペコだったのに、なぜかメニューにそそられない。とりあえずワッフルと、ハッシュブラン、ベーコンとコーヒーと朝食のようなランチをオーダー。カウンター裏の鉄板で白人が調理をする。新人なのか手つきが怪しい。ちょっと焼き過ぎかしら? と言いながらテーブルに運ばれてきたベーコン。ようやくオーダーした品が揃って食べ始めると、やっぱりベーコンは焼き過ぎで食べれない。「やっぱりー?」と言いながら黒人の女の子が「ベーコン焼き直して!」と新人コックに指示を出す。そんなわけでこの写真にはベーコンが写っていないのだ。
期待とは裏腹にがっかりな「WAFFLE HOUSE」。違う店舗だったらもう少しマシだったのかな、などと思いながらも、射撃場と同じく、もう2 度と来ないと心に誓った思い出の1枚。