「好きな映画は黒澤明の『七人の侍』」 MR PORTER PAPERBACK 日本語版スペシャルインタビュー#8 / スタイルある男たちのスタイルはどうつくられたのか?

Michael Kopelman

  MR PORTER日本語版発刊スペシャルインタビュー。今回はステューシーUKの中心人物であり、英国にストリートファッションを広めたレジェンド、マイケル・コッペルマンさん。ステューシーやシュプリームを広め、現在は「Gimmie Five(ギミーファイブ)」などのアパレルを中心にスマートにカルチャーをスマートに発信する。また、ロンドン拠点のデザイナーやスタイリストで構成するクリエイティブ集団のブランド「AFFIX WORKS」ではボス的な存在でもある。

 90年代より「ステューシーUK」をはじめイギリスのストリートシーンを牽引し続けるマイケル・コッペルマンさんによって設立された「Gimme Five(ギミーファイブ)」。彼の存在を語るには「音楽」があることを忘れてはいけない。カルチャーとファッションの融合には少なからずこのブランドの影響があるだろう。そんな彼の幼少期はどんなだったのだろうか。

Q1 映画や小説、アートで影響受けたものはなに?
 小さい頃はできうる限りTV(テレビ)を見ていたね。テレビは3チャンネルしかなくて真夜中には放送が終わってしまうんだ。あとオールナイトでやっている映画館へも行った。なかでも好きな映画は黒澤明の『七人の侍』(1954)だったね。本も読むのも好きでジャック・ロンドン著『The call of the wild(野性の呼び声)』*なんかはお気に入りの1冊。

『The call of the wild(野性の呼び声)』
人間の飼い犬として育てられたバックが極寒の地のソリ引き犬という過酷な環境に投げ出されながらも内なる「野生」を目覚めさせていく動物が主人公になった文学。著者ジャック・ロンドン自身も15歳の頃から牡蛎密漁、アザラシ猟船乗組員、発電所の石炭運搬など様々な職につき、各地を放浪する。

Q2ギミーファイブはどうして始めたの?
 ロンドンで金融関係の仕事をしていたんだけど、ある日ほぼ全員解雇になったんだ。すでにそのときはDJをしたり、日本へも何回も行っていたりした関係でニューヨーク/LA/東京となにが起こっていたかを見聞きしていたからとても刺激になっていた。そこで会った友人から新しくロンドンを拠点にしたプロダクト展開を希望されているなとわかったんだ。

Q3 あなたにとってスタイルとは?
実用的なスタイルが好きだ。

 ストリートとモードが接近した90年代。ストリートファッションを語るうえで「音楽」と「カルチャー」は密接に結びついていた。そして、もちろん彼の存在を語るには「音楽」があることを忘れてはいけない。
 ニューヨーク、ロンドン、LA。世界同時多発的に音楽のシーンからファッションやグラフィックへと結びついてブランドや雑誌やラジオ、クラブやミュージックなどのビジネスとしてカルチャーを昇華させてきた。
 それはまだSNSがない時代。情報源は雑誌やフライヤーだけ。クラブに行くとデヴィット・ボウイ、デヴィット・バーンが通り過ぎたり、映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で観たラウンジリザースのメンバーと恋に落ちた人を間近に見ながら、キース・ヘリング、デヴィット・ラシャペル、デビュー前のマーク・ジェイコブス、多くの名物編集者やファッション関係者が集う。かと思えば『STUSSY TRIBE』のイベントでは、スケーターの男の子たちやSKATE THING が隅っこでフロアにしゃがんでいたり、クラブはまるでいまのSNSのようにおもしろいことを探しに来た人たちでひしめいていた。
 もちろんその時代に来日した写真にあるブリストル発マッシヴ・アタックの前身DJ/サウンドシステムユニットThe Wild BunchのオリジナルメンバーDJ Miloの姿もあった。日本に初来日したのは30年ほど前になるだろうか。土臭いビートとセンスのよい選曲で、たちまちDJになりたい日本の男の子たちを魅了し、みなこぞってブースの周りを席巻していた。
 そんな日本の90年代とは別になるが、英国カルチャーシーンをカットしたのが『CUTS』だ。

Q4 書籍『CUTS』について教えてください。
 1978年ジェームス・ルボンによってロンドンはケンジントンマーケットで始まったカルトヘアドレッサーがCUTS(カッツ)なんだ。数々の熱狂的なファンを抱え1990’sから2000’sにかけて共同経営者であるスティーブ・ブルックが撮り下ろした500ページに及ぶポートレイトを書籍としてまとめたのが『CUTS』。
 この秋の10月ドキュメンタリーフィルム映画 「No Ifs Or Buts’」で有名なサラ・ルイス監督の手によって映画「Steve, James and Cuts」がロンドンフィルム・フェスティバルでプレミア上映された。同時にロンドンのカルチャーの歴史を語る書籍も発売となったわけ。
 当時は写真にあるように三連の白黒写真は35ミリを大きく引き延ばしたものをソーホーのお店のウィンドウに飾られていた。その店を舞台にロンドンの90年代からのおもしろいカルチャーシーンが発信されている貴重な時代風景が詰まっているのがわかるだろう。ここのヘアドレッサーのファンには有名人も多いことで知られている。日本ではピンとこない人も多いだろうが、ボクサーのデビット・ヘイ、ミュージシャンでDJのゴールディー、映画監督のアイザック・ジュリアン、ミュージシャンのギャヴィン・ロスディル、アダムスキ、シェフのアンドレア・オリバー、ファッションデザイナーのジュディ・ブレイムなどが写っている。普段は見せないヘアスタイリストを前に見せる気取らない表情とハイセンスなヘアスタイルとドキュメンタリーが楽しめると思う。

書名: CUTS
編集:マーク・ルボン
サイズ:17cm×24cm/ハードカバー/500P/¥9,800(税別)
出版: Gimme5 and Dobedo

 ストリート精神とともにありながらつねにリラックスした姿勢でアンテナを張り巡らせつつ時代に対してオープンであること。そんなスマートさがマイケルの魅力だ。その魅力がルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターだったキム・ジョーンズも排出したのだろう。「リラックスして臨む」からこそ余裕とクリエイティビティが生まれてカルチャーとなるのだなとしみじみ実感させられる。最後にリラックスを保てる秘訣を聞いてみた。

Q5 毎日習慣にしていることは?
 毎日ヴィンヤサヨガ(「一呼吸一動作」呼吸と動きを一致させることでヨガのポーズを呼吸に合わせてリラックスしながら流れるように連続して行う)とインドにおける最も古い瞑想のひとつヴィパッサナー瞑想をやっているよ。この瞑想法は2500年以上も昔のインドで人間に共通する病の普遍的な治療法で「生きる技」として指導されていたんだ。
 

Gimmie Five(ギミーファイブ)
www.gimme5.com

マイケル・コッペルマン●ロンドン在住。アパレルブランドGimmie Fiveのファウンダー。1989年ステューシーUK、シュプリームなどのディストリビューターとして活動を開始。現在はStussyをはじめTHE NORTH FACE、The Good Company、Parra、FACT.、MALIBU、FUCKING AWESOME、SUICOKE、Jason Markkなどを取り扱う。またNY発のインターネットラジオ“KNOWWAVE”でDJとして活躍し、音楽ネタにまつわるグラフィックのアイテムなどカルチャーと密接。おのずとミュージシャンの知り合いも多くカルチャーとファッションの融合には少なからずこのブランドの影響があると言える。

書影
THE MR PORTER PAPERBACK
THE MANUAL FOR A STYLISH LIFE VOLUME ONE

男性はモノを購入する際に納得のいく理由や意味を見出した時、 購入に踏み切るという。また、ファッションへの不安や悩みも多いという男性も少なくない。そんな男性心理を解決してモノの価値や質の分かる30〜40代の男性顧客に向けて世界最大規模となったメンズECストアがある。それが、MR PORTERだ。

取り扱うブランドやアイテムも充実しているが、ストアの魅力は単にモノを並べるだけではない。週1で更新するウェブマガジンで、ニーズに直結した「楽しくて価値ある情報」を徹底キュレーションして掲載。 月間ページビューは2500万を超える。

「読んで買いたい」意欲を高めて、自ずと「商品購入」へとつなげたショッピングスタイルなのだ。「編集」を指揮したのは元英国版『Esquire』誌の編集長だったジェレミー・ラングミード氏。

そんな英国のメンズスタイルとエディトリアルが見られるVOLUME1の翻訳本がMR PORTERと付き合いが深いBEAMSの監修で登場。 有名人のスタイル解説から生活を楽しむヒントまで、プロたちによる価値のある情報は読んで納得、もちろんビジュアルを見ているだけでも魅力な1冊。

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