世界から注目を集める女性アーティスト 西 祐佳里(にし・ゆかり)が自身初の大型絵画作品を披露する展覧会をThe Massにて開催

作品の世界を等身大スケールで再現した空間インスタレーションと映像作品も公開する

西祐佳里の作品は、自身が撮り溜めた写真や古い雑誌の切り抜き、インターネット上の画像などから採取した素材をストックし、下絵としてそれらをデジタルコラージュしたものを、アクリル絵具を使いキャンバスに描き起こしています。

コラージュを絵画として表現するといった発想から現在に至る西のスタイルは、コラージュが持つ一種の心理療法的な側面も内包しており、自身を投影した最新の記録(Record)と内的な世界を行き来する修練を繰り返しながら筆を使い、オリジナルの技法で制作を続けてきました。

本展が初の発表となる大型キャンバスの作品をはじめとする新作では、コラージュの世界観を超越し、どこまでも広がる空や、緑が青々と茂る草原、芝生、そしてどれも名前を持たない、正体不明の未知の生き物を混在させた大胆な構図は、鮮やかな色で描かれるモチーフと解像度の異なるイメージを配置することにより、その違和感や陰影をより強烈に描き出し、コラージュと映像といった異なるメディアの質感を絵画の技法を用いて見事に融合させ、表現している。80 年代のSF やホラー映画に登場するモンスター、原始的なクリーチャー達の印象がモチーフの源流となっており、作品の視覚的なストーリーが訴えかける、どこか不穏でありユーモラスな絵画世界は、西の原体験を持って大きく影響しているものと言える。

また、近年の情勢から、西自身が内向的に家族と過ごす日々の中で生まれた作品も多く、例えば、手づかみで食べる機会の多いハンバーガーの隣に消毒液が置いてあるものや、外気から身を守ろうと防護ヘルメットを被っている少女がいたり、これまで意識してこなかった当たり前の日常へ問いかける場面も多様に描かれ、時代を反映するモチーフも数多く登場。

 

西の作品で特徴的な、光の方向が生み出す違和感や、顔のない人物、感情不在のぬいぐるみ、平静な動物たち。現実と虚構を混在させる架空の構図は常に不条理であり、日常世界の歪みを独自の表現で描き、見るものにその意味を深く訴えかける。

コラージュへの考察から派生する様々な解釈は未知なる可能性を広げ、それらの変換として自身の絵画表現の具現化を試みています。本展では、The Mass Room 02 にて西の作品世界を等身大のスケールで再現した空間インスタレーションと映像作品も公開。

西 祐佳里は京都芸術大学(元・京都造形芸術大学) デザイン学科を卒業後、絵画技法を独学で学び、培ってきた構成技術や造詣を生かしながら現在の絵画スタイルに行きつき、制作を続けています。近年では2021年に開催された「VIEWING」(SAI)の出展も記憶に新しく、国内外で注目を浴びている。