冬は長編を読むのに挑戦する。
本には厳しい冬と向き合うための覚悟を呼び起こす力もあったりする。寒いとか苦しいとか、とてつもなくつらいとか、身も心もシビれるようなことが収録されている本を読むことによって、新たな決意が生まれるかもしれない。それと、冬の間に読み切る覚悟で長編作品にトライするのもいい。読了するころには、満足感とともに春がやってくるはず。
本には厳しい冬と向き合うための覚悟を呼び起こす力もあったりする。寒いとか苦しいとか、とてつもなくつらいとか、身も心もシビれるようなことが収録されている本を読むことによって、新たな決意が生まれるかもしれない。それと、冬の間に読み切る覚悟で長編作品にトライするのもいい。読了するころには、満足感とともに春がやってくるはず。
―――最良の本は最高の友達である。
『旅をする木』 星野道夫 文藝春秋 1999年
一瞬の美しすぎる紅葉ののち、長く厳しい冬が始まるアラスカ。その地で写真家として多くの作品を残した星野道夫氏の珠玉のエッセイ。この本以前以後で自分の中で何かが変わる。そしてこれ1冊を懐に入れてれば、あなたは孤独ではない。
―――登山をしない人にもオススメ。
『空へ INTO THIN AIR』 ジョン・クラカワー 文藝春秋 2000年
1996年、世界で1番高くてハードな場所、エベレストで起きた遭難事故からの生還者によるノンフィクション作品。登山本としてだけでなく、極限状態における人間模様のドキュメンタリーとしても読みどころがあり、世界的ベストセラーに。
―――エベレストでの悲劇の真相。
『デス・ゾーン 8848M』 アナトリ・ブクレーエフ 角川書店 1998年
前述『空へ』の筆者とは別の隊の一員だった世界有数のクライマーによる、1996年のエベレスト登山についての回述本。突風吹き荒れる雪山で、何があったのか。この悲劇において存在する2つの本と2つの見解を読み比べてみるといい。
―――困難に対して冷静に向き合う。
『凍』 沢木 耕太郎 新潮社 2008年
登山をまったくしない自分が山の文献を読むときは、決まって冬だ。暖かな団欒から抜け出して、極限の環境下へと身を置く人びとの精神性や人生観について読みふける。自分が目指す高みはどこで、なにか。そんなことを改めて考えることになる。
―――難解で長い物語を読む楽しさ。
『1Q84(1~3)』 村上春樹 新潮社 2009年
個人的には短編『回転木馬のデッドヒート』がもっとも好きだが、世界的な”Murakami”作品の中でも、難解で長編なタイトルを秋から冬にかけて読み込んでみる。常に持ち歩いて読む行為がもはや冬休みの課題であり、ファンタジーに。
―――持て余す正月休みを解消する長編。
『シャンタラム(上・中・下)』 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ 新潮社 2011年
パスポートや免許証といったIDがまったく意味をなさない世界。そこで執拗なまでに描かれる作家による生々しい体験。いつのまにか高温多雨な夏から乾季の冬へ、ボンベイというカオスな街が、頭の中で映画のように立体化されてくる。
―――東北という土地の日々の暮らし。
『東北 TOHOKU』 田附 勝 リトル・モア 2011年
東北大震災以前以後。今作はそこにあり喪失してしまった有形文化、暮らしの中で伝承されてきた儀式や文化を収録し、22世紀まで残したい写真集だ。俳優・東出昌大が『東北』を巡ったアンサー本的な『西から雪はやって来る』(宝島社)もオススメ。
―――冬は寒いだけじゃないんだな。
『センチメンタルな旅・冬の旅』 荒木経惟 新潮社 1991年
冬の1冊。私小説的写真日記と評される今作品は、写真家は優秀な編集者でもあるということを証明している。とにかく自分のタイミングでいいからページをめくって欲しい。そのいつかのために、今から所蔵しておくことをオススメしておく。
『雪国』 濱谷 浩 ※写真左
冬と言ったらこれ。そういう本があるように、もっと直接的な写真集がある。好みはあるけど、例えば、濱谷 浩『雪国』、宮崎 学『死』、そしてトド・ハイド『A ROAD DEVIDED』あたりが、あなたのブックラックに並んでいたらいいなと思う。
『HELLO PANDA』 小澤 千一朗 ※写真右
拙著『HELLO PANDA 』は、暑い夏よりも寒い冬のほうが断然に絶好調のパンダたちの本。和歌山県にある「アドベンチャーワールド」で、2017年では唯一降雪した日に喜ぶパンダの姿も収録している。とにかくひたすらにカワイイ。
※本ページは『warp MAGAZINE JAPAN』2017年12号に掲載された情報を再編集したものです。