エルム街の悪夢/チャールズ・バーンスタイン「One! Two! Freddy's Coming For You ! 」

ロック、ジャズ、ヒップホップなどの音楽や映画。〝男〟を感じるものを常に好いてきた高岩 遼のフェイバリットな映画とそれにまつわる音楽を、〝高岩流の男の美学〟として紹介していきます。文章・絵:高岩 遼


さて、すっかり虫の音も変わり、秋晴れが気持ちいい季節がやってきましたが…… 、なんだかすっかり忙しくて夏の怪談話もまともに喰らってないまま秋に突入しちまったメンズへ1発紹介したい映画がある。あっ、カワイイあの娘とキャッキャしながら観るのはやめとこう! エンドロールには嫌われちゃうかもしれないからね、あらかじめ。
「I’ll kill you slow…… 」中折れハットの男は眠りとともにやってくる。ただれた顔面からこぼすナスティな笑い声と、右手にはめた鉄の鉤爪のキリキリ音を響かせて。良い子も悪い子も関係ナシ。夢の中で襲われれば最後。同時間軸に現実でも八つ裂きにされていて、2度と朝日もスクランブルエッグも拝むことできませーん。その悪夢の名は”フレディ・クルーガー” 。もともと幼児ばかりを狙う殺人鬼で、裁判で無罪放免になったんだけど、遺族たちによって生きながらにして燃やされたんだ。だけど、そのおぞましい怨念はあの世で高く評価され、悪魔たちにより復活。ひとびとの恐怖がガソリンで、逆に世の中がその存在を忘れてしまうと現れることができない。
そう、まずジョニー・デップの処女作ってのもウケるし、何よりロバート・イングランドの名演が光るスプラッター・ホラーの金字塔といえば『エルム街の悪夢』だ。観たことある? 男ならチェックしなきゃ、だぜ。例えば『13日の金曜日』のジェイソン青年や、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスおいたんは、いわゆる”怪物”の称号が正しい。だけどフレディには理性があって、仕事現場も夢の中ゆえ、ありえない環境とユーモアのリズムで殺しを楽しむ、いや愉しむワケよ。もはやダンディズムすら感じさせる”怪人”。いや、オレの中では永遠の”ダーク・ヒーロー”なんだよね。カッコいいよー、女好きだし。お馴染みの×××シーンも豊富だ。俺、中学のころに毎晩見入っていてて、ママに心配かけてたなぁ(笑)。
ホラー映画にとって、背景で流れる音楽や効果音ってとっても重要。1枚岩。鑑賞後に風呂場でふと思い出すあの不気味なメロディってあるじゃん?『エルム街の悪夢』では、アメリカ版「かごめかごめ」的な子どもの遊び歌が耳にだーるく残るよ。俺たちも襲われないように覚えておこうぜ。
♩One, two, Freddy’s coming for you.(いち・にぃ フレディがやってくるぅ~)
♩Three, four, better lock your door.(さん・しぃ ドアに鍵かけて~)
♩Five, six, grab your crucifix.(ごー・ろく 十字架握りしめ~)
♩Seven, eight, gonna stay up late.(なな・はち しっかり目をあけて~)
♩Nine, ten, never sleep again…(きゅー・じゅー 眠りにおちちゃダメ~)

作曲者は、チャールズ・バーンスタイン。『キル・ビル』や『イングロリアス・バスターズ』なんかでも参加してるみたい。タランティーノからのリスペクトかしら? そうそう、俺のヒップホップへの入りはウィル・スミス(というかフレッシュ・プリンス)なんだけど、そのメロディをサンプリングネタで使っている「Nightmare On My Street」を聴いたときは高まったね。映画観てからぜひ聴いてみて。フレディとウィルのユーモアが交差するハズだ。そんな感じでさ、今年の10月31日近辺はフレディ・クルーガーのコスチュームで交差点を乗り切ってくれよ。『渋谷街の悪夢』。