ザ50回転ズ
warp読者のみなさん、そろそろ僕の連載にも馴染んできましたかね？ 毎回ドキドキもんですけど自由なテーマでやらしてもうてる以上、僕、頑張るんやから！ 未だ応援メッセージ、ファンレター届いてへんけど、僕負けへんで～！text：フジワラ（THE クルマ）
浪速が誇るロックンロールトリオ、ザ50回転ズ。名うてのロッカーであり、名探偵でもある僕は、足で稼ぐこのスタイルのおかげで、来年1月にやつらがフルアルバムをリリースするってことを嗅ぎつけた。そりゃ近ごろ、やたらめったらレコーディングスタジオ付近でウロウロしてた訳や！ やっと尻尾を掴んだぜ。ようし、50回転ズの野郎ども、逃さねえぞ。
50回転ズとはともに大阪発で同世代R&Rトリオながら、音楽性は陰と陽の如く対照的で、対バンも数える程度、そう一見絡みのない2組と思われがちですが、その昔、堺を中心とした南大阪にもロックシーンがあり、2組ともそこから出てきて、超絶若手のころから知った仲なんです。当時THE クルマのステージデビューが、50回転ズより1年半ほど早かったという、ただそれだけの理由を未だに俺は鼻にかけ先輩面をし、回転の3匹を今回アメ村に呼び出したって算段だ。寒空の下、うっと先輩に付き合いで三角公園に行かなければならない50回転ズの寝起きの気分になってみ？
でも顔を合わせたらこのとおり（エンジョイ♪）！ で、じっくり対談とか取材っぽく……と、サテンに入ってお茶してたらワイワイ雑談になっちゃった。笑けたわ。
青臭いあのころを知ってる者同士ならではの昔話に花が咲くけど、若気の至りデモテープのこととかもう2度と言うなよ（切実）。というワケで、ザ50回転ズの実に9年ぶりとなる会心！ 渾身！ 自信！ の4thフルアルバム、その名も『ザ50回転ズ』が1月17日（水）にリリース！ アルバム名が『ザ50回転ズ』。タイトルにバンド名をそのまま付けるといういわゆるSelf Title 、またはSame Title（S/T ）方式。これロック的に非常になコト。S/Tにした時点で、名作だろうが迷作だろうが、例え100年経って誰がどう評価しようとも、それがバンドの代表作になるねん。言わば、確固たる自信がない限り、そう簡単には決断に至れない聖なる儀式のようなもの。S/Tにした経緯を、おふざけなしのマジで話すダニー（Vo&Gt ）の真っ直ぐな眼差しと熱量の半端ない発言で、単に大きく出た訳じゃないっつう自信とその根拠が伝わった。
今作の冒頭を飾るのは、2016年に自主リリースしたロッカバラードの名曲「Vinyl Change The World 」の新録。こちらの3匹、様々な音楽のエッセンスをグイッと一気飲みしてはロックとして吐き出す訳で、M2「ハンバーガーヒル」の音も弦も弾け飛んでまうようなパブ直系カッティングミュート＆不意打ちのダブアレンジが効いたR&Rから、サウンドメイク思い切りNWOBHM（ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルの略ね） × GRAMROCK（グライムロックです）なM5「クレイジージジイ」。ウッドベースでジャズも歌謡もカントリーのテイストも見え隠れし、極めつけに三味線まで持ち出して、日本人のロックンロールに新たな可能性を提示するM6「ちんぴら街道」。「ぃよっ！」ちゃうわボケ！ そんなメインソングライターのダニーが書くメロディは、どれも音符がぴょんぴょん飛び跳ねてキャッチー！（前述の先輩後輩は冗談やけど、作曲の先輩としては今回こいつまじで良い曲ばっか書いたなと思う）。一気に高音域に駆け上がってシャウト気味に唄うダニーの声はやっぱ色気あるね。「こんなん演りたいなって何も考えずに思いつくまま素直に20曲作ったわ。その中から良いところだけをパッケージしたからこれもうベスト盤やね！」（ダニー）。
「これまでの自分たちの音源も全部飲み込んだ上で、1番俺たちらしいアルバムになったね」（ドリー）。
ドリー（Vo&Ba）作曲のM8「デヴィッド・ボウイをきどって」も収録。”浮遊感”がイメージの核とのことでアナログシンセを導入。メイン楽器の空間を埋める宇宙的な音の拡がり方が新鮮。エイトで刻むポップパンクに、アナログシンセと間を活かしたギターソロが加わり、タイトルも相まって、澄み切った冬の夜空を彷彿とさせられました。ボギー（Vo&Dr ）が「この曲は速いエイトビートの中の、遅いエイトビートを叩いてんねん」って、言うてることはようわからんかったけど聴いたら納得やったわ。多彩な音色が入って音がまろやかになってるのかと思いきや、そこはボギーがしばき回す裏切らない8ビートでピリっと締めてる。
「やっぱ新曲でツアー回りたいやん、それもフルアルバムくらいのボリュームじゃないとさ、申し訳ないやん！」（ダニー）。
これはダニー自身がロックファンの目線をずっと持ち続けてるから言える言葉や、素晴らしい。そんな彼らは現在ワンマンツアー真っ最中！ みんな、僕の代わりに奴らを追ってくれ～。とまぁ、以上の理由から贅沢に厳選された全12曲、聴き応え充分やのにその続きが聴きたくなるこの感じが策ならば、俺はまんまとハマった。このアルバムはとてもかっこいいモノです。ロックンロールを好きになってしまった以上は聴いとくべき名盤。写真はパパッと撮ったモノやけど、キメ顔じゃないダニーの少年のような笑顔を収められて、家でニヤニヤ加工してました。がはは！
PS.ボギーへ。
ちょっとした隙を見つけては、小さな声で何度も何度も俺だけにボケてくれたね。最後のほうはツッコめなくなってきて聞こえてないフリしたよ。またやってな。
