CULTURE

PEN GAME PROPER by Akeem the Dream #004

好きな洋楽の曲があったとして、きみはその歌詞の意味までちゃんと理解して聴いていますか? これだけ数多くの名曲がある中で、 せっかく出会えた運命の1曲なら、きちんとその内容を理解したい。ということで、ヒップホップ好きのAkeem the Dreamさんによるラップ解説をお送りします。
text:Akeem the Dream illustration:Toyameg

/CHECK THE BARS/ Drake「Diplomatic Immunity」

去年から少しの間、世間に姿を見せていなかったドレイクが、2月にミニEP 『Scary Hours』をリリース。ラジオフレンドリーな「God’s Plan 」とは裏腹に様々なカルチャーのレファレンスが濃縮され、ドレイク独特のメロドラマとウィットが効いた「Diplomatic Immunity」を今月はご紹介!

〔Verse 2 〕

2010 was when I lost my halo
2017 I lost a J.Lo※1
A Rotterdam trip※2 had me on front page though
I had to lay low, Hot Topic※3 like your everyday clothes
Closed off but I could never stay closed
Billboard awards, I claimed 13※4 out in Vegas like Sureños※4
Black excellence※5, but I guess when it comes to me it’s not the same though, all goodie
That just pushed me to do the things we all couldn’t
Niggas stakin’※6 out the crib, it’s all gravy※6
Protection that God gave me
Shit is complex※7 like short niggas ‘round tall ladies※7
I gotta watch who I’m talkin’ to like it’s all-ages
I’ve seen buddin’ careers turn to sit around and talk about other careers, judgin’ their peers
Knowledge from niggas who did not contribute to none of this here


2010年 俺は光輪を失った
2017年 ジェイローを失った
ロッテルダムへの旅は新聞沙汰になっちまった
(A-Rod はマジでなくねえか?)
まるで毎日着るHOT TOPIC しばらく身を隠してた
周りから閉ざしてた でも閉めっぱなしにはできない
ビルボードアワード まるでスレーニョス ベガスで取り戻した13冠
別にいいんだけど、俺の場合は優秀なブラックの枠外か?
まあ、これも今までにない功績作るきっかけだ
野郎どもウチを監視しやがる でも神がご加護を与えてくれる
まるで背の高いレディたちの周りにいる背の低い奴らのコンプレックス
年齢制限がない だから誰と話すか気をつける
駆け出しの(ジョー・バドゥンの)キャリアがやがてテレビで他人のキャリアを語りだし
挙句に仲間を評価する様を見た
ここらには、何ひとつ貢献しない野郎の知識だ

 

check 1…2016年の暮れにアルバム『More Life』でコラボレーションしたのち広まったドレクとジェイロー(=ジェニファー・ロペス)のロマンスの噂は結局真剣なものではなかったとジェイローがテレビ番組のエレンのインタビューで告白。
check 2…ドレイクが2017年の”Boy Meets World Tour”でオランダを訪れている際、コンサートを3回キャンセルしユダヤ教徒の派手な成人式(バル・ミツワー)でパフォームしたこと、ポルノ女優を妊娠させたと告発されたことを「A Rotterdam trip(ロッテルダムへの旅)」と名付け(ロッテルダムはオランダの都市)これを「A-Rod a damn trip」( A-Rod はマジでイケてない)と発音し同音異義語を発明。A-Rodは現在ジェイローと付き合っているNYヤンキーズを代表する元メジャーリーガー、アレックス・ロドリゲスのこと。
check 3…若者に向けたカウンターカルチャーを題材にした洋服やアクセサリーを生産販売するアメリカの会社。ドレイクを題材にしたアイテムも多数販売。
check 4…ラスベガスで行われた2017年ビルボードアワードの授賞式で22部門にノミネートされたドレイクは13部門で受賞し、2012年にアデルが受賞した12冠の記録を超える驚異の結果となった。そしてメキシコ系アメリカ人によるストリートギャング集団であるスレーニョスは南カリフォルニアに起源を持つ。これらのギャングの多くはアルファベットの13番目がMexicoのMであることから13という数字を多用。
check 5…ジェイ・Z 、ビヨンセ、カニエ・ウェスト、ケンドリック・ラマーは、はっきりと極めて優秀な黒人アーティスト(=ブラック・エクセレンス)として祝福されるが、ドレイクはこのカテゴリーの人間として認識されていないと感じているよう……。
check 6…Stakin’とはStake outの省略形で”監視する”という意味、It’s all gravyはIt’s all goodと同じで”全然大丈夫”という意味なので、自分は監視されても構わないという意味だが、Stakin’がステーキに聞こえることから、グレイビーソースのGravyを使った表現をチョイスするドレイクのワードプレー。
check 7…背の低い男が背の高い女性の周りにいる際に感じるナポレオン・コンプレックスと『Complex』マガジンをかつて出版し、現在は巨大なウェブメディアへと成長した、Complexとをかけている。
check 8…buddin’ careersとは、”駆け出しのキャリア”という意味だが、ここではドレイクの作品に幾度となくComplexの人気動画番組『Everyday Struggle』内でダメ出しを続けたジョー・バドゥンのキャリアを指してディスっている。ジョー・バドゥンは2000年代Def Jamに所属しデビュー曲「Pump It Up」をヒットさせたが、その後のキャリアはパッとしなかった。

Akeem the Dream profile

キーム・ザ・ドリーム。原宿次男坊、ヒップホップ愛好家、デザイナー、コーディネーター、スタイリスト、コラムニスト、翻訳家、ライフスタイルコーチ。
@akeemoney@reservednote(Instagram)

RELATED POST

TOP