Gallery COMMONがコラージュアーティストIchi Tashiroを 初の所属作家として迎えた大規模個展 「Serendipity」を開催
現代のデジタル社会に異を唱え、ニューヨークでホームレスとして過ごしながら製作していた 当時と同じ工程で、折り紙などから着想を得たパネルに金融新聞などを用いて カラフルに構成された新作コラージュ作品14点を披露する。
これまでに、Parra(パラ)・ERIC ELMS(エリック エルムズ)・Cali Thornhill Dewitt(カリ ソーンヒル デウィット)・Waku(ワク)・TIDE(タイド)・河村 康輔など様々なアートショーを手掛け、2021年に移転リニューアルしたGallery COMMONが初の所属作家として、Ichi Tashiroを迎える。
ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋めることを目指すGallery COMMONが見出した世界中が注目するIchi Tashiroという逸材の大規模個展を開催。
今回の展覧会では「30年間の潜在意識の研究の成果」として、30年前の作品と同じプロセスで制作された新作を計14点を発表。日常的なものから独自のファンタジーの世界を創り出し、捨てられたものから魔法や新たな始まりを見出すという、無垢ともいえるほどストレートなアプローチ。そんな無邪気さ、不器用さも感じることのできるTashiroのシュールレアリスム的な作品は、それに付随するなぐり書きや勢いのある絵の具の斑点によってさらに魅力を増している。
そして、金融新聞をカラフルな世界に変身させることに象徴されている遊び心と労働社会の徒労への否定は、Tashiroの人生哲学ともなっている。しかしながら、これまで彼がキャリアを始めた頃と今では世界が大きく異なり、Tashiroの創作活動は、皮肉なことに、紙媒体としての新聞や雑誌が失われつつある絶望的な状況の中で展開されてきた。デジタルが急速に普及し、物理的な相互作用が失われる中、Tashiroは紙媒体の歴史と未来について考える。本展で展示される木製パネルの形は、1700年代に江戸で生まれた折り紙の伝統からインスピレーションを得て制作された。折り紙は、紙自体が彫刻やアートのような役割を果たす。そんな折り紙を模して形で作られたパネル上に貼られた現代の新聞の切り抜きは、折り紙と違って、紙は文字や事実を伝えるものとして機能する。それぞれ違う使い道の背景を持つ素材をコラージュするという行為は、これまで紙が文化や情報、そしてもちろん芸術を伝える手段として機能してきたことを明らかにし、紙の役割、ひいてはコミュニケーション手段やそれによって定義される創造性の可能性について、我々に示唆を与えている。