The Massでは2022年8月27日から9月25日まで倉田裕也 個展「Summer Hours」を開催。
日本では3年ぶりの開催となる本展では、新作キャンバス作品18点を発表。
身近な日常の風景を描く倉田の作品は、その素朴な光や一瞬の光景、言葉では例えられない内面的な感情を絵画に浸透させ、’今しか描けないもの’ を表現。
本展覧会のタイトル、「Summer Hours」という言葉の通り、夏の明るく眩しいほどの陽の光や、大きな木々から降り注ぐ木漏れ日、はしゃぐ子供たち、水面に映る景色は高く広がる空をも反射させ、満月の月明かりは柔らかくあたり一面を照らしています。倉田の作品に登場する人物たちの表情はあえて単純化されており、デフォルメを用いたその自由な描写によってより馴染み深く、キャンバス一面に広がるユーモラスな絵画世界へ私たちを誘う。
世界中を混乱させたCOVID-19のパンデミック以降、自然の中で家族と過ごす時間が多くなる中で、身近な景色を被写体とし自身が撮影をした写真をベースにドローイングを描き起こし、以前のフリーハンドで描くスタイルから徐々に変化を遂げ、キャンバスに落とし込む現在の表現にたどり着いている。色彩豊かな表現は、一見水彩画やクレパス画のようにも見受けらる。油彩による丁寧な筆のタッチと日常生活の様々な場面からインスピレーションを受け描く構図は時に漫画的であり、馴染みのある風景と融合させ、倉田自身のニューヨークでの生活を投影しながら、日記を綴るように描いてきた。
日本を離れ、23年間ニューヨークを拠点に活動している倉田は、その傍らで2007年から15年間絵画修復のスタジオで様々な絵画技法を取得しながら働いてきた。アメリカのアートシーンの移り変わりを見続け、アーティスト同士のコミュニティーやアートに携わる人も数多く生活する環境で、制作活動を続けるにはとても便利な都市だと倉田は言う。環境やコンセプトは出来るだけ固定せず制作に挑み、常に柔軟に自身と向き合いながら描いてみたいものを描いてきた倉田の自由で個性的なスタイルは、作風に変化は見られるものの一貫して身近な存在を観察し、マスメディアや大衆文化と対極に潜む内面的な魅力や豊かな感性から見出される景色を独自の目線で解釈し、自身の制作の中で常に探究を続けているものと言える。