CULTURE
本作の舞台ロックフォードはかつて栄えていた鉄鋼や石炭、自動車などの産業が衰退し、いまやアメリカの繁栄から完全に見放された「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」に位置する。2016年の大統領選では、“夢を失った”ラストベルトの人々による投票がトランプ大統領誕生に大きな影響を与えた。
ビン・リュー監督は、10代の頃から撮りためたスケートビデオと共に、閉塞感のある故郷で必死にもがく若者3人の12年間を通して、親子、男女、貧困、人種…さまざまな分断を見つめ、“トランプのアメリカ”の知られざる現実をも映し出した。「21世紀アメリカの豊かな考察」(ニューヨーク・タイムズ)、「ドキュメンタリーの新時代」(WIRED)と評され、アカデミー賞、エミー賞Wノミネートの快挙、サンダンス映画祭をはじめ59の賞を総なめ、ロッテントマト100%と、全米の批評家・観客、そしてオバマ前大統領もが絶賛。11月に控える大統領選の鍵を握るラストベルトをあらためて注目してほしい。
『行き止まりの世界に生まれて』の主人公たちの等身大の物語を通して、未来のアメリカが見えてくる。この予告篇は、幼い頃、仲間たちとスケートビデオを撮っていたビン・リュー監督の「テイク・ワン」と言う笑顔から始まり、キアーやザックらスケボー仲間の回想から勢いよく幕を開ける。そして突然の転調から、カメラ越しにキアーにビンが質問する。「親から暴力を受けたことは?」と。陽気な予告は一変し、彼らの置かれた過酷な状況が少しずつ浮き彫りになっていく。彼らの住む町は“繁栄から見放された場所”であること、それぞれに家族との不和や、暴力、貧困が常に隣り合わせにあることなどが伝わってくる。一緒に育った彼らが成長するにつれて共に必死にもがきながら、自分自身と向きあっていく姿が涙を誘う。
登場人物の一人であり、監督でもあるビンは、キアーに「お前の”ストーリー”に僕自身をみた」と言う。自分の中で押し殺していた過去や葛藤をカメラに向かって吐露することで、それぞれの中で何かが変わっていく。趣味のスケートビデオから始まったこの作品は、若者たちのパーソナルな物語でありがらも、分断の進む今の世界を映しだす奥行きをみせ、全米の映画祭での受賞、絶賛評を獲得し、アカデミー賞・エミー賞Wノミネートまで果たす稀有なドキュメンタリーとなった。
苦境の中で生きながら、それでも「前に進みたいんだ」と願う彼らの背中にエールを送りたい。本予告をチェックして9/4からの全国順次ロードショーを楽しみにしてほしい。
監督・製作・撮影・編集:ビン・リュー
出演:キアー・ジョンソン、ザック・マリガン、ビン・リューほか
エグゼクティブ・プロデューサー:スティーヴ・ジェイムス(『フープ・ドリームス』)ほか
93分/アメリカ/2018年
英題:MINDING THE GAP
配給:ビターズ・エンド
© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
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9月4日(金)、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
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