湖に浮かぶステージで元ちとせが熱唱し、格納庫がクラブへと変貌。秘境で開催された「GINZAN FESTIVAL」潜入レポート
モン吉、浅野忠信が魅せた!雨にも負けず熱狂したGINZANステージ
6月8日、9日の2日間に渡り新潟県・魚沼市の銀山平で「GINZAN FESTIVAL」が開催された。10km以上続く手彫りのトンネルを越えると、越後駒ヶ岳や荒沢岳などの雄大な山々に囲まれた自然保護地区の銀山平にたどり着く。ここでは6月にも関わらず多くの残雪があり、新緑と白銀のコントラストがなんとも美しい。自然に恵まれたこの場所では、天然記念物のイヌワシなどが生息し、“本州最後の秘境”とも呼ばれている。
初日はあいにくの雨だったが、会場となった銀山キャンプ場は早い時間から多くの来場客で賑わっていた。そのオーディエンスにスイッチを入れたのが、浅野忠信率いるバンドSODA!。代表曲である“命燃やして!”から“FUNK PUNK YEAH!”と、のっけからフルスロットルで観衆を煽る。雨に打たれる客席に「いまここが一番熱い場所だって証明しましょう!」とマイクで叫ぶと会場から大きな歓声が上がり、会場のボルテージはさらに上がった。
オーディエンスの心を鷲掴みにしたSODA!に続きモン吉が登場。ファンキーモンキーベイビーズの名曲“あとひとつ”で、大合掌が起こり会場の一体感は増す。そしてこの日のハイライトとも言えるのが、代表曲のひとつ “ちっぽけな勇気”を披露したときだ。「俺たちはまだちっぽけで、この手のひらには何もないけど、雨に打たれ、風に吹かれ、でも諦めないから…。(中略)きっといつか何かを掴むんだ」。大自然の中で熱唱したモン吉のポジティブなメッセージは、多くの人の心に響き共感を産んだことは、止むことのない大歓声のフロアから手に取るように感じることができた。
そしてGINZANステージのトリを飾ったのがDef TechのShanとYAYとDJ HIKATSUによるユニット。レゲエカバーを中心にプレイし、のっけからステージで大暴れ。そしてビッグサプライズは、“Touch Down”でBillboard Top 40 DanceにチャートインしたアメリカのレゲエシンガーIAKOPO飛び入り参加。これにはオーディエンスも大興奮!
雨にも関わらず、終始超満員のステージを熱狂させてGINZANステージの幕を閉じた。
遊覧船の格納庫がクラブに変貌!奥只見湖をバックにウェアハウスパーティ!
GINZANステージを終えると会場を奥只見湖の湖畔にある倉庫へ移動した。
そこは普段は遊覧船の格納庫で、そんな場所にサウンドシステムとライティングを仕込み爆音が鳴らされるウェアハウスパーティへと姿を変えていた。ここでは、クラブライクなDJたちが多数プレイした。このフェスティバルの主催者であり、WAWWのクリエイティヴディレクター小堺大輔(DJ53)とDJ84によるユニット53+84が、テックハウス〜ビッグルームハウスなど、大箱映えするアップリフティングな選曲で超満員のダンスフロアを揺らす。
時にマイクパフォーマンスでオーディエンスを煽るなどし、終始フロアをロックしていた。続いて、DJ DRAGONが登場し、QUEENの“We will rock you”など大ネタを連発し、ダンスフロアをさらに盛り上げる。ここで一度、夜の部のピークを迎える。DJ DRAGONが終わるとダンスフロアから少し人が引いたような感じになったが、それはダンスミュージック好きのみが残るよりダンス密度の濃いフロアとも言い換えられる。後半は、MCでも参加していたBryan Burton-Lewisがダークでストイックなテクノをプレイし、UKアンダーグラウンドのウェアハウスパーティさながらな空間になった。
そして最後に登場したのが、この夜のベストアクトとの呼び声も高いNAOKI SERIZAWAだ。アフロファンクからカリビアンディスコにラテンまで、まるで音楽で旅をしてるかのような選曲でフロアを熱狂へと導く。気づけば格納庫の中には多くの人が踊り楽しむ熱気にあふれたダンスフロアとなった。そしてその盛り上がりがアンコールまで続き歓喜に包まれたままGINZAN FESTIVALの1日目は幕を閉じた。
空を見上げると雨は止み、満点の星空が広がっていた。
湖に浮かぶ魅惑のステージで元ちとせが熱唱。イヌワシの登場か…?
2日目は、今回のイベントの目玉である奥只見湖に浮かぶ湖上ステージ supported by XS™がメインだ。
オーディエンスは、100名ほどが乗れる遊覧船から鑑賞するか、ステージを囲むように配置された小型ボートに乗り込むか、50mくらい離れた対岸から鑑賞するかの3パターン。私たちは、ステージから一番近い小型ボートから鑑賞したのだが、波に揺れる小型ボートで浮島のようなステージで披露されるライヴを見るのは、とてもユニークでこれまで経験したことのないものだった。
オープニングを飾ったのは、津軽三味線の奏者の久保田祐司だ。袴を優雅にまとい湖上のステージに立ち、津軽三味線の名曲からダンスミュージックにアレンジしたオリジナル曲までを演奏。伝統芸能と電子音を融合させ、現代と過去を行き来する。後半では、和太鼓奏者の山部泰嗣がステージに加わり、より力強いパフォーマンスを披露した。
そして、奄美大島が産んだ歌姫の元ちとせが登場した。彼女が第一声を発した瞬間に会場の空気が一変した。 “語り継ぐ事”や“腰まで泥まみれ”といった代表曲を湖上から熱唱する。独特のコブシとファルセットを使った特徴的な節回しは、奄美に古くから歌い継がれている奄美シマ唄という歌唱法だ。オーディエンスは、そのパフォ−マンスを息を飲んで見守っていた。激動のステージというよりは、静けさをまとった神秘的なステージ。それは彼女のバックボーンからなるアーティスト性とあのロケーションが相まって生まれたものであることは間違いない。ラストにはデビュー曲“ワダツミの木”を披露。その時、頭上を見上げると大きなワシが大空を羽ばたいていた。あれは天然記念物のイヌワシだったのか?もしそうだとしたら、彼女の民謡独特のスピリチュアルな歌声が天に届いたのではないだろうか。
次回のGINZAN FESTIVAL’20は2020年6月6-7日の満月に開催予定。
大自然でしかもフルムーンで行われるということで、来年も期待が高まる。