GIRLS

その女たち、ストリートにつき。

ファッション、スケート、音楽、……、「SG by warp」読者のみなさんは、多くのストリートカルチャーに影響を受けているはずだが、スノーボードのストリートシーンで日本はもちろん、世界を舞台に活躍するガールズライダーがいるのはご存知だろうか!? 今回フィーチャーするのは、日本のガールズスノーボードシーンをストリートというフィルターを通して、間違いなく底上げしている2人の女子だ。取材当日に撮影された、ここでしか見られない映像もぜひチェックを!

撮影協力:スノーヴァ新横浜
photos:Dar
Edited: Yutaro Hirakami

海外のスノーボードメディアからも数多く取り上げられ、注目度の高い日本のムービークルー『Dirty Pimp』の中心的存在でもあるガールズライダー・34(MIYON)とKARIN。スノーボードには、大会シーンで活動しているライダーもいれば、作品撮りを中心に活動するライダー、滑りのジャンルもフリーライディング、バックカントリー、ハーフパイプ、パーク……、など、とにかくたくさんのスタイルがあるのだが、彼女たちが中心としているのが、レールやウォール、街なかの建造物など、人工物が設置されたロケーションを利用して撮影を行う「ストリート」というシーンだ。

34「シーズン中はほぼ撮影をメインに活動していて、シーズンが終わると、残したフッテージでムービー制作にとりかかります。先月くらいまでは、自分たちのムービーのツアーで全国をまわっていました」

KARIN「私は昨シーズンまで高校生だったこともあって、学校の休みを利用して撮影へ参加していました。だから、今シーズンは撮影をスタートして、初のどっぷり撮影ができるシーズンなんです!」

撮影に明け暮れるシーズンを送る彼女たちのロケーション探しとは。

34「一度やったことのある場所も行くし、ほかのライダーたちやムービーからの情報をもとにトライすることもある。パッと見ていい構図で擦れそうなものをチョイスしたりも……。雪が降っていなくても、人工物はつねにそういう目で見ています(笑)」

KARIN「本当に!どこの町へ行ってもそういう風にしか見えないんだよね。都内でも “このレールいいね!” とか」

34「私は雪のない福岡出身だけど、地元へ帰っても “これめっちゃいいレッジ!” とかよく思っています!」

KARIN「もはや職業病だよね(笑)」

昨シーズンは北海道を拠点にしていたと思うんだけど、今年はどうするの!?

KARIN「湯沢を予定しています! ずっと撮影ばかりしていたので、練習をする時間が足りないな、と思っていて……。今シーズンは練習にも時間を割きたいなと。石打丸山をベースに働きながら滑りまくってスキルアップしたいですね」

34「撮影ばかりだと、スキルアップって望めないんですよね。1日で2カットでも撮れたら “よかった!” って感じなので。同じ技だけをメイクできるまでやることも当たり前のことで……。あと、土方作業も多いんです」

KARIN「アイテムを見つけたら、そこで撮影がきるように、雪かきやアプローチ、ランディングを確保するために土方作業が必要で……。ミスったら大怪我するような場所も多いので、大変だけど準備には時間を費やす。だから、腕の筋肉めっちゃつきますよ!」

34「階段を掘り起こすだけで3時間くらいかかったりね。で、作業終わって、“よし、今からやろう!” ってときに警察が来たり。 極力、交渉はするようにしています。熱意が伝わって撮影ができるような方法を教えてもらえる場合もあるし、最初から超怒られるときも! 」

KARIN「本当に! “これだけ準備してトライ出来ないの!? ” ってこともあるけど、いちいちヘコたれたらやってられないので、切り替えるようにしています」

スキルアップに時間を費やすってことなんだけど、フリーランもたくさん滑り込む予定なの!?

34「私は雪山で基礎固めて、フリーランももっともっと全部うまくなりたい!」

KARIN「フリーランもパウダーも最高に楽しいしもちろん滑るんだけど、結局パークが一番楽しい! ってなります! やっぱりカッコいいって思う」

34 「欲を言えば、山の映像も欲しいなって思っているんです。ナチュラルヒップを造って飛んだり……、滑りに幅が欲しいし、全部できるとカッコいいと思うから……」

KARIN「私、まだナチュラルやったら死ぬと思う(笑)。スキルも知識も正直そこに関しては全然足りていないから……。今はストリートをメインに極めていきたいな。学校がないので、来年の夏はアメリカのマウントフッドにも行きたいって思っています」

息があっているような、あっていないような……、お互いマイペースな2人の出会いは!?

KARIN「代々木公園で毎年『SNOWBANK』というレールを擦るスノーボードのイベントがあるんですが、呼ばれる前は一般の枠で勝ち上がって出場していたことがあって、34ちゃんはすでに目立っている存在でした」

34「昔からKARINちゃんの存在は知っていたんですが、代々木のイベントで彼女を見たときに、スキルが上がっているのはもちろんなんですが、背が伸びていて、手足も長くって細身のコーデでスタイリッシュだな~、と思って声をかけたんです! じわじわと一緒に活動するようになって、気づいたらがっつりって感じですね」

KARIN「34ちゃんとは年齢も10歳以上離れているけど、本当に仲間っていう感じ。高校生のときは学校の友達とJKらしいこともしていたんですが、卒業したら本当に34ちゃんとばっかり一緒にいる(笑)。スケートしたり、スノーボードしたり、好きなことが共通しているし、もめることなんて一切ないです!」

34「『Dirty Pimp』で8年活動していて、女子がずっといなかったんです! KARINちゃんとここ2年くらいで本格的に撮影するようになって、私にとって彼女の存在は精神面でもすごくデカいです! やっぱり波長があるから、同じものを目指していても、合う、合わない!ってあると思う。そこがビタっと合っているから本当に出会えてよかったなって……。やっぱりメンズとは喋らないんですよね(笑)。私は女子だし、何ならメンズはちょっと苦手……、みたいなところあるんで! それがチームのクルーたちと良い距離感を保っているとは思っていますが」

写真左(上)
Rider:34
Location:Hokkaido,Sapporo,Street
写真右(下)
Rider:KARIN
Location:Hokkaido,Otaru,Street

2人で撮影していても、どうしても撮影には恐怖心がつきもの。その切り替え方とは。

KARIN「私、めっちゃチキンなんです! 本当にどうしようもないチキン(笑)」

34「もう“やるしかない!” って感じなんです。ここまで準備して“やらない” は“ない” っていう場面が多いし、潜在的にやる能力はあるんだから、あとはメンタルだけだっていつも思っています」

KARIN「めったにないけど、“やらない” っていう判断をすることもあります! 不安な気持ちが残っているのはやっぱり危なくて。昨シーズンはそういう判断ができなくて、手も折れて、顔面がグチャグチャになるくらいヤラレました(涙)。もうあれは判断ミス! 雨でボードが走らなくなって、気持ちだけが高くなっていて、“絶対この画残すっしょ! ” みたいな感覚になっていて、状況が見えてなかった」

34「私も撮影をスタートした1年目に内臓損傷の大怪我をしたんです。ダウンレールだったんですが、クルーのメンズたちはガンガン入っていて、“私はできない” なんて引いちゃうでしょっていう焦りがあって、イメージのついていないままトライしたら、めっちゃヤラレた。それからは、このアイテムできる! って思えるまでスピードチェックとイメトレを絶対にしています」

KARIN「そういう状況判断も経験を積むことが大事だと思うし、やっぱり怪我しちゃうとね……、活動が止まっちゃうから。毎年えぐいスポットはシーズンの最後ですね(笑)」

34「だけど、今シーズン気になるロケーションがあって、それはダブルダウンというちょっとえぐいアイテムなんですが、一発目にやれたらいいな、とは思っているんですよね……」

KARIN「やばい、想像するだけで今緊張してきた!」

34「私も、本当に今から緊張してる。めちゃめちゃ怖い……(笑)」

KARIN「そういう感覚が好き!っていう変態もこの世界にはいるんだけど、うちらはそれが別に好きなわけじゃないから、普通にファンなスノーボードで癒されたいこともあります!」

34「KARINちゃんは、なんか最近貫禄出してきてるよね。人生を凝縮しちゃってるから(笑)。もう卒業はしているけど、高校生活を送るなかでこんなにストリートの撮影をしている女子高生なんていないよ!」

KARIN「昔から年上には見られるんだけど、苦労しすぎて、貫禄ばっかり出てきちゃってる(笑)」

取材をしたスノーヴァ新横浜でのひとコマ

共通点も多いし、波長も合っているけど、とにかくまったく交わらない部分も多い。ファッションやライフスタイル、好きなこと、ストリートへのこだわりも本当にバラバラだ。

34「特に日本ではKARINちゃんみたいなスケートして、冬にがっつりストリート撮影して、っていう女子のこの感じは特殊だと思うんだよね」

KARIN「それが好きだから! それじゃなかったら、別にいいかな……、って感じなんですよね」

34「私はけっこう多重人格なところがあって、好きなものや興味があるものがバラバラなんです。スノーボードでは、ファッションもダボっとメンズっぽいのが好きだし、カッコよく見られたいんだけど、普段惹かれるものは猫とかぬいぐるみとかポケモンとか可愛いもの! 絵も大好きなんです」

KARIN「本当にそういうところはまったく合わないですね。全然興味ない(笑)。たまに34ちゃんの “Pokémon GO” の散歩にダイエットの一環としてついて行ってます」

34「うん、遊んでもらっています……(笑)」

KARIN「スノーボードするファッションも全然細身がいいし、なんならビーニーも被らないし、サングラスでいいし。ファッションも34ちゃんとは全然違います!」

34「KARINちゃんは美脚でお尻がキレイ!強調しているんですよね」

KARIN「してないから!(笑)」

自然と人工物の造形美、ライディングやファッション、光……、さまざまな要素が重なってひとつのアートとしての作品となる「ストリート」。彼女たちは満足のいくフッテージを残すために、お金も時間も労力も惜しみなく費やす。

34「めっちゃ大変なことだらけ。だけど、自分が表現したいスノーボードがカッコいいもので、それがストリートにある」

KARIN「カッコいいことが大事で、作品が残ることが快感!」

34「自分のイメージ通りにいくことってそうないものなんです。だけど、それができたときの快感は本当にたまらない。そのためにお金貯めて、撮影で全部消える!」

KARIN「ぜ~んぶなくなります!」

34「時代が変わって、スポンサーからの活動費のサポートが厳しくなっているけど、ムービーが流行っていた時代の人たちと同じくらい動いている! 移動費や宿泊費とかバカにならないけど、こだわってやっています! 貯金突っ込んだってやりたいし、貯金ゼロでもやりたいことやれて、認められてきている」

KARIN「それをバネにまた頑張れるし、多くの人に映像が届けばいいな、とは思っています!だけど、ストリートの世界に引き込みたいっていう気持ちは一切ないんですよね! だって危ないもん、本当に。でも、それでゲレンデのパークで遊ぶ女の子が増えて、盛り上がって欲しいな、っていう気持ちはあります」

34「うん。スノーボードには興味を持ってほしいけど、うちらがいる世界をおすすめしたいとは思っていない。一緒にパークでセッションしたい!って言われたらもちろんやりたいし、そういうガールズスノーボーダーは増えたらいいな。私、年齢も年齢なんで、次のステップとして表現することから “伝える” ことも考えていきたいなって思っているんですよね」

KARIN「なんかフェードアウトするようなことを最近言ってくるんですよね(笑)。なんだかんだ、やってるよ、好きだから!」

34「あ、やっぱり……。普通に結婚とかしたいのに(笑)。振り幅広げてラインの撮影とかしたいな、難しいけど見応えのあるような……。だけどKARINちゃんはこれからもハンマースポットで撮影だよね」

KARIN「まだまだストリートの撮影がしたい! 命がけだけど、本当に死にたくないから超滑り込んでうまくなって、もっといいフッテージ残したい」

彼女たちが命を削って取り組むストリートの世界。海外のスノーボードシーンからも注目を浴びる実力のある2人のガールズライダー34&KARIN。自分たちのスタイルで、さらに飛躍する彼女たちの今後の動きから目が離せない。

左(上)
Profile  34(miyon)
世界から注目されているフィルムクルー『Dirty Pimp』の裏ボス的存在。ライダー、デザインや映像編集でも活躍。その独自の世界観とライディングスタイルで注目を浴び、今シーズン、世界トップクラスのライダー、ジェス・キムラがプロデュースするムービー『The Uninvited 』でフルパートを獲得。
インスタグラム:@34miyon34

右(下)
Profile KARIN
東京生まれの19歳。横浜にある室内ゲレンデ・スノーヴァ新横浜でスキルを磨き、2015年から本格的に『Dirty Pimp』を中心にストリートの撮影をメインに活躍。スケートライクなスタイルと長い手足と細身スタイルなファッションで魅せる驚愕なフッテージに注目が集まっている、実力派ガールズライダー。
インスタグラム:@carin0507_

RELATED POST

TOP